求塚 ロンギ
初春に若く美しい乙女達の若菜摘の様子を描写した場面。しかし、若菜摘には清純な乙女を摘むという暗示がある。 後場でシテが凄惨な地獄の責めを語る場面とは対照的に描かれています。
詞章
まだ初春の若菜にはさのみに種はいかならん。
春立ちて朝の原の雪見れば。まだ古年の心地して。
ことし生は少なし古葉の若菜摘まうよ。
古葉なれどもさすがまた。年若草の種なれや。心せよ春の野辺。
春の野に 春の野に。菫つみにと来し人の。若紫の名や摘みし。
げにや緑の色に染む。長安のなづな。唐なづな。
白み草も有明の。雪に紛れて摘みかぬるまで春寒き。
小野の朝風また森の下枝松たれて。何れを春とは白波の。
河風邪までも冴返り。吹かるる袂もなほ寒し。
摘み残して帰らん。若菜摘みのこし帰らん。